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  • 更新サボっていたので1月後半の分をまとめて一気にレビュー!

    1月22日(木)『コート・スティーリング』@ユナイテッドシネマ浦和 スクリーン3

    『ブラックスワン』『ザ・ホエール』のダーレン・アロノフスキー監督最新作。隣人の飼い猫を預かったことから、マフィアに脅迫される事態に陥った青年の姿を描く

    ダーレン・アロノフスキー監督の作品では『レクイエム・フォー・ドリーム』がお気に入りで、以来基本彼の新作は必ず観ることにしている。さまざまなジャンルを手がける監督なので、今回も新境地と捉えることができるし、そういう意味ではなかなか興味深かった。原作があるのでストーリーはしっかりしているし、オースティン・バトラーのダメっぷりや、レジーナ・キングのいいオンナ感、その他のキャストも個性派揃いで入場料分は十分楽しめる。

    ただ、こういう「裏社会に巻き込まれた顛末」みたいな作品は、どうしても『パルプ・フィクション』などのタランティーノ作品が強烈すぎて比べてしまうので、「これはダーレン・アロノフスキーが撮るべき作品なのかな」と思ってしまったのも事実。少なくともこの作品からは「彼らしさ」「彼ならではの面白さ」みたいなものはあまり感じられなかった。ちょっともったいない。

    1月29日(木)『恋愛裁判』@TOHOシネマズ池袋 スクリーン7

    (※ネタバレ注意。結末に触れます)

    『淵に立つ』『よこがお』など、国際的にも評価の高い深田晃司監督の最新作。アイドルの恋愛の是非を問う裁判という、とてもユニークなテーマに挑んでいてなかなか面白かった。観た後でみんなでワイワイ議論できるタイプの映画です。

    主演は元日向坂46の齊藤京子。脇を唐田えりかや津田健次郎が固める。

    まず主人公が所属しているのが「秋元康プロデュース」や「ハロー!プロジェクト」のようなトップグループでない、B級感あるグループなのが良かった。なので芸能事務所的にはスキャンダルは死活問題だし、損害賠償などは切実であろうことが画面から伝わってきて、実にリアルだった。物語は「まあ、そうなるだろうな」という展開なのだが、観ている間アイドル側にも共感するし、事務所側の事情もわかるし、という感じでなかなかスリリングです。

    僕の不満点は、「それを言ったらキリがないだろう」と自分でも思うので参考程度に読んでほしいのだが、まず「齊藤京子は芝居はちゃんとしているが、可憐さがちょっと足りないな」ということ。彼女は現役時代から肝が据わっているタイプだったので、だからこそ、この難しいテーマの映画の主演を張ることができたのだと思う。だけどこの主人公に「折れてしまいそうな繊細さ」があったらこの映画はさらに深くなったのではないかと思ったのも事実。

    あと深田監督の映画にしては「あまりエグくなかった」のが不満だ笑。これまで深田監督の作品は人間の中の「どす黒さ」みたいなものをしっかりと描いていて、それが僕にとってはとても魅力的だった。だが今回は「そういうものはあまり必要ない」と判断されたのか、割とサラッとしている。特に裁判における金の話や、原告側弁護士が具体的な行為の事実確認をしようとするところとかは「もっとグリグリやっても良かったのになあ…その為の齊藤京子じゃなかったのか?」と、少し物足りなさを感じてしまったのは事実。

    とは言え、ラスト近く、齊藤京子の恋人が「日和る」ところとか、裁判が意外と拍子抜けするような結末になるのも深田監督らしいリアルさですごく興味深かった。

    あと芸能事務所のマネージャー役・唐田えりかはとても素晴らしかった。やはり本物のスキャンダルを乗り越えた者にしか出せない凄みもあったし、いかにも「アイドル上がりのマネージャー」という感じが最高でした。そして出番もセリフも少ないけど津田健次郎もさすがの存在感だった。こういう作品はリアルさが命だから、そういう部分が嘘っぽくないのはやはり深田監督という感じ。

    1月30日(金)『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』 @MOVIX川口 シアター1

    富野由悠季原作による劇場版アニメーション『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』シリーズ第2作。監督は村瀬修功。それにしても1作目が2021年の公開だからなんとその間5年である。もう少し製作のテンポを上げてくれてもいいのに、と思うが、ガンダムファンはクオリティ優先だからいくらでも待つのだろう。このペースだと完結編の第3作は2031年か。何とも遠い未来の話になりそうだ。

    第1作はとても素晴らしくて、冒頭のテロ制圧アクション、中盤のダバオ襲撃シーン、後半のクスィーガンダムVSペーネロペーの海上決戦と見応え十分。エンディングテーマの[Alexandros]まで隙のない展開で、2部3部への期待を十分に感じさせる素晴らしい出来だった。

    さて今回の作品はというと、僕は原作を読んでいるのだが、それでも「あれ?どういうこと?」というシーンが多かった。いわゆるこの作品は「明るくスカッとしたアニメ」でないことは十分承知しているが、それにしても不親切な描写や暗い場面表現が多すぎる。キャラクターの行動がどうなったのかよくわからないのだ。あと『逆シャア』回想がしつこい笑。

    そう、とにかく画面が暗いのである笑。1作目も暗かったが、そんなに気にはならなかった。今回はなぜか本当に暗かった印象。特にモビルスーツ戦が全然よく見えない。新型ペーネロペーなんてパンフレットを見て初めて「こんな形だったのか」と思った程。これって劇場の当たり外れがあるのだろうか?IMAXだったらもう少しはっきり見えるのだろうか?

    もうちょっとお客さんにわかりやすくしてあげてもいいのに。富野さんは怒らないのかな。

    あとパンフレットが1200円もしたのだが、手抜きもいいところである。1作目はスタッフのコメントやプロダクションノート、設定や場面説明などもあって盛りだくさんだったのだが、今回のパンフは声優のコメントが載っている程度で、場面スチールも小さいし少ない。しかも広告でお茶を濁している。1作目のパンフと比べたらかなりひどい出来である。

    唯一の救いは入場者プレゼントがハサウェイ&ギギバージョンだったこと(僕は男なのでギギ推し)。でもまあとりあえず、もう1回は観に行こうかな(ガンダム世代笑)。

  • こんな撮影して本当に大丈夫なのか?と心配になる45年前の傑作『ジャグラー ニューヨーク25時』

    今回公開された4K修復版のポスタービジュアルです。カッコいいけどちょっと上品すぎるかな?

    この映画が公開されていた1980年当時、僕の住んでいた街には映画館が2館しかなく、上映できる作品は限られていて、大衆向けの大作・話題作が中心だった。この『ジャグラー ニューヨーク25時』もテレビ(確か日本テレビの「TVジョッキー」浜村淳の映画紹介コーナーだったと思う)で紹介されていてぜひ観たいと思っていたのだが、そのためには2時間かけて県庁所在地の町まで出かけなければならず、断念していた。

    資料によるとその後、VHSになったきりで、DVD・Blu-ray化はおろか配信もされていない幻の映画になってしまったとのことで、テレビ放送などもされたのだろうが僕は見逃してしまっていた。

    と言うわけでなんと公開から45年!4Kリマスター版としてやっと劇場の大スクリーンで観ることができることになったのだ。感無量です!

    シングルファーザーの元警官・ボイドは、学校に送る途中の娘キャシーを何者かに連れ去られてしまう。誘拐犯はキャシーを富豪の娘と間違えたのだ。ニューヨークの街を混乱させながら必死に誘拐犯を追跡するボイドだったが、そのために警察からも追われる羽目になってしまう…というストーリー。

    とにかく冒頭から展開する市街地での激しい追跡劇に圧倒される。おそらくセントラルパークの周辺と思われる通りを使って、車を何台も乗り換えてのカーチェイスや、地下鉄なども使って延々と逃げる誘拐犯とボイドの追跡劇が描かれるのだが、混乱に巻き込まれるニューヨークの人々の反応が、まるでゲリラ撮影しているのではないかと思うほどの臨場感だ。なんてったって大勢の市民がいるのに、警官が街中でライフルをぶっ放したりするのでもうメチャクチャです笑。あれは当時でもダメでしょ笑。

    物語はボイドの追跡を描きながら、彼がなぜ警察を辞めたのか、犯人はなぜ誘拐を行ったのか、などの事象が少しづつわかるような仕掛けになっていて実にワクワクさせてくれる。その過程で当時のニューヨークがどんな様子だったのか、人々はどんな問題を抱えていたのか、といったようなことがうまく盛り込まれていて、人種のるつぼである当時のニューヨークの街そのものが、よくわかるようになっているのが実に興味深い。

    主演は僕の生涯ベスト映画の1本『カプリコン・1』の主演:ジェームズ・ブローリン。ジョシュ・ブローリンのお父さんである。タフだけど頭もキレる父親という役柄にピッタリのイメージで素晴らしい演技と存在感。カッコいいです。その他のキャストも、スターではないけれど色々な映画で見たことあるなという感じの名脇役たちが適材適所の演技を見せてくれる。

    4K修復版とはいえ70〜80年代の映画なので、今のデジタル撮影の映画みたいなキレイさはない。むしろフィルムグレインが目立つ粗い感じの画質なのだが、それがむしろこのワイルドな映画の雰囲気や、当時感にピッタリ合っていて効果的だ。

    まあとにかく今までDVDやBlu-rayになっていなかったのが勿体無いほどの面白さだった。これはまさに幻の傑作。未見の方はぜひ。

    『ジャグラー ニューヨーク25時』監督:ロバート・バトラー 2026年1月18日@シネマート新宿 スクリーン1

    1980年公開当時のチラシのビジュアル。雰囲気はとても映画に合っていますね。

    蛇足的追記:

    🔳実はこの日のシネマート新宿では、1974年公開、ピーター・フォンダ主演の『ダーティ・ハンター』も上映していた!これもはるか昔『月曜ロードショー』で観て面白かった記憶があるけど、それ以来観ていない“幻の映画”の一つ。こちらは公開50周年らしいです。いや〜これは観たいね〜笑

    これが今回のポスタービジュアル。センスいいです。
    こちらが50年前の公開当時のポスタービジュアル。最高ですね。「ジョイパックフィルム配給」が泣かせます。当時ピーター・フォンダのアクション映画は本当にどれも面白かった。
  • 2026年一発目の劇場鑑賞映画は78歳クセつよ脚本家の最新監督作『星と月は天の穴』

    『赤い髪の女』『Wの悲劇』『ヴァイブレータ』『共喰い』など、日本映画に数々の傑作を残した名脚本家であり、監督でもある荒井晴彦の監督最新作。70年代のロマンポルノ作品からキャリアをスタートさせた彼の脚本作品は、どれも一癖も二癖もあるが、同時に忘れられない深い味わいがある。1997年の『身も心も』からは監督業にも進出し、すでに5本のメガホンを取っているからもう立派な映画監督である。

    僕は根岸吉太郎監督・荒井晴彦脚本の『遠雷』(1980年)を観て以来、脚本家・荒井晴彦のファンだが、直近の監督作『火口のふたり』(2019年)と『花腐し』(2023年)ですっかり“監督・荒井晴彦”にも魅了されてしまい、最新作の公開を楽しみにしていた。

    原作は吉行淳之介。綾野剛演じる、女を愛することを恐れる一方で愛されたい願望をこじらせる40代の小説家・矢添の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら描いていく物語。矢添と関係を持つ大学生・紀子を咲耶、矢添の馴染みの娼婦・千枝子を田中麗奈が演じる。

    いわゆるドラマチックなストーリー展開のようなものはなく、ふわふわと捉え所のない中年男の、恋愛にもなっていないような男女関係のあれこれが淡々と描かれていく。人によっては「一体何を見せられているのだ?」と思うかもしれない。そこには人間の哀しさ、愚かさ、可笑しさがあって、それはそれで面白いのだが、まあぶっちゃけ観客を選ぶタイプの映画ではあるだろう

    今回は監督の前作・前々作とは作風がガラリと違っていて、登場人物たちが棒読みのような淡々とした台詞回しで、あまり感情を交えないで会話する。男女のいわゆる“からみ”シーンもそれなりにあるのだが、淡々と機械的に行われていて、全然いやらしくなく、こちらもかなり滑稽である。これまで荒井晴彦といえば、情念がからみあうような性愛シーンをいくつも描いてきたけれど、「今回はそういう方向性ではないからね」ということなのだろう。荒井晴彦の過去作を愛する者としてはいささか物足りない感じがしてしまうが、これはまあ仕方ない。

    同じ吉行淳之介原作の『夕暮まで』(1980年 監督:黒木和雄)などでも、セクシャルな関係がありながら心は乾いている、みたいな人間たちを描いていたので、これは吉行作品の資質の一つかもしれない。『星と月は天の穴』も1969年の設定で、「革命」とか「デモ」とか全共闘世代のワードが台詞として出てくるけど、こちらも言葉に熱がなく、諦念があるのだ。

    熱さを欲してはいるけれど、そこに辿り着けないでいる人の淋しさ、可笑しさを荒井監督はやりたかったのかもしれない。

    2026年1月8日 @TOHOシネマズ シャンテ3

    蛇足的追記:

    🔳監督の前作『花腐し』に続いて綾野剛が主演を務めている。こういう「一般ウケしにくいタイプの作品」に彼のような人気俳優が出演することによって、きちんと製作できる体制が成立する。さらに彼は完成披露や舞台挨拶などでも自分が積極的にマスコミの前に出て、やや偏屈な荒井監督のスポークスマンとなって笑いを取っていた。そういう意味でも綾野剛は、山田孝之や小栗旬たちに通じるプロデューサー的感覚を持った俳優として本当に素晴らしいと思う。今後ともぜひ頑張ってほしい。

    🔳僕が特に好きな荒井晴彦脚本作品は『餌食』『遠雷』『キャバレー日記』『ダブルベッド』『Wの悲劇』『ひとひらの雪』『ベッド・イン』『恋人たちの時刻』『リボルバー』『ヴァイブレータ』『やわらかい生活』『共喰い』『福田村事件』など。もっとあるけど本当に素晴らしい傑作ばかりです。そして監督も務めた『火口のふたり』『花腐し』はマジで最高。もし観ていなかったらぜひ観てみてください。

    原作とはちょっと違って舞台が秋田になっちゃったけど、それでも傑作。
    綾野剛、柄本佑、さとうほなみのアンサンブルが素晴らしい!

    でも家で観る時は一人でこっそり観た方がいいよ笑

  • 71歳ジャッキーじいさんの鉄拳はまだ衰えていないぞ『シャドウズ・エッジ』

    日本版メインビジュアル。スタイリッシュです。

    80年代全盛期のジャッキー・チェン映画をリアルタイムで観てきた世代としては、ハリウッドに行ってからの彼の映画はずっと不満だった。ユニオンの問題か何かで、ジャッキー本人が危険なアクションやスタントをあまりやらなくなったのも物足りなかったし、体を張るのは若手に任せて、自身はストーリー的にお膳立てされたおいしい役回りだけを演じている、というのも違和感があって、だんだん彼の出演作を観ないようになっていった。『ベスト・キッド』(2010年)とか本当に悲しくなるくらいつまらなかった。

    人は永遠に若くはいられないから、それは仕方のないことなのだけれども、ジャッキーならもう少しやりようがあるのではないかな、と思っていたのも事実だ。『トワイライト・ウォーリアーズ 決戦!九龍城砦』(日本公開2025年)でのサモ・ハン・キンポーを見て「彼はこういうふうにうまく年齢と役柄に織り合いをつけてアクションもしっかりやっているのに」と思ったりしたものだ。

    しかし2025年の年末、ジャッキーファンのそんな忸怩たる思いを吹っ飛ばしてくれる怪作がついに現れた。それがこの『シャドウズ・エッジ』である。

    たぶん本国版メインビジュアル。

    正体不明のサイバー犯罪集団が暗躍するマカオが舞台。なす術のない警察に最後の切り札として、“追跡のエキスパート”黄徳忠(ジャッキー・チェン)が呼び戻される。彼はすでに現役を退いていたが、若き精鋭たちとチームを組み、犯罪集団“影”を追いつめていくが…というストーリー。

    オープンニングのアクションシーンはちょっと派手すぎて嘘っぽく、あまり乗れなかったけれど、その後の、ターゲットである傳隆生を追跡チームが尾行してアジトを特定するシーンが実にスリリングで見応えがあり「この感じならアクションがなくても全然イケるじゃん」と思わせてくれた。そこから後半は俄然物語にもエンジンがかかり、追跡サスペンスとド派手アクションがバランス良く展開し、いい意味で期待を裏切ってくれた

    こちらもたぶん本国版ポスタービジュアル。ちょい縦長。

    なんと言っても、71歳ジャッキー・チェンが「ちゃんと地に足のついた」アクションを見せてくれるのが最高だ。映画のアクションというと派手な仕掛けばかり優先されるけれど、今回のジャッキーのアクションは泥臭い格闘がメインで、まさに“死闘”と言えるような本気の闘いばかり。長らくこういうジャッキーのアクションを見ていなかったので「これこれ!こういうのが見たかったんだよ!」と思ってしまった。

    もちろん『プロジェクトA』(1983年)や『ポリス・ストーリー 香港国際警察』(1985年)のような全盛期の体のキレには及ばないけれど、71歳で頭も薄くなったジャッキーが、その年齢に相応しい、全力のアクションを見せてくれるのは実に胸が熱くなる

    そして宿敵となる犯罪集団のトップ・傳隆生が、極悪非道なのに時折人間らしさを垣間見せたりする実に魅力的なキャラクターで、「へえ、存在感のある上手い役者がいるなあ」などと思っていたら、なんと『愛人/ラマン』(1992年)のレオン・カーフェイだった!映画を観ている間は全然気づかず、後から彼だと知って「え〜!!」とびっくりしてしまった。流石の演技力と壮絶なアクションに圧倒されました。

    上映時間は141分と、この手の映画にしてはかなり長尺ですが全く緩まない展開と、個性的な俳優たち、そして緊張感あるアクションで長さを感じさせない満足度の高い一本。2025年を締めくくるのにふさわしいエンタテインメント作品でした。見逃したら絶対損しますよ

    『シャドウズ・エッジ』監督・脚本:ラリー・ヤン 2025年12月27日@新宿バルト9 シアター5

    蛇足的追記:

    🔳僕は公開3週目の土曜昼の回に観ましたが、バルト9の大きめのスクリーンでほぼ満席でした。終わった後皆さん口々に「面白かった」と言っていました。レビュー評価も軒並み高いのに、早く公開終了しちゃう劇場が多くてすごく残念です。もう1回観たいのに。

    🔳俳優陣は皆熱演ですが、特にジャッキーのパートナーとなる若手女性警官を演じるチャン・ツイフォンが素晴らしかったですね。彼女は『シスター 夏のわかれ道』(2021年)が良かったし、少し前に公開された『フライトフォース 極限空域』(2024年)でもアンディ・ラウの娘という重要な役を好演していて印象に残っています。

    こちらはインターナショナル版のポスタービジュアルかな?ちょっとパンチがないですね。

    🔳あと無駄にイケメンが多く出てきます笑。傳隆生の息子を演じたツーシャーは金城武の若い頃に本当にそっくりです。そっくりすぎて笑えます。

    🔳入場者プレゼントで、映画のメインビジュアルとキャラクターたちが8種類あしらわれたカードをもらえました。大きさは完全にポストカードなのですが、裏にも写真が印刷されているのでポストカードとしては使えないという笑。普通の人にとっては、どうしたらいいのかよくわからないプレゼントです笑。僕はもらえて嬉しかったです。飾ります。

    公式には「ジャバラカードというそうです笑」

  • 新鋭監督の才気が溢れる『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』は必見だけどチャンスは限られる

    この映画の予告編を見て『こいつは面白そうだ』と思い、公開を楽しみにしていたのだが、ミニシアター系の中でも小規模公開作品らしく、劇場も時間も限られていてスケジュールを合わせるのに苦労した。何とか公開週に観ることができたけれど翌週からはさらに観るのに苦労しそうだ。平日夜の回に観たが、観客の入りは3〜4割と言ったところか。作品の情報もなかなか届きにくいし、届いても時間帯や劇場にかなり制限があったりするので、ミニシアター系作品はこういうところが実に難しいですね。

    スイス山中の小さな街でお針子をしているバーバラは、唯一の肉親だった母を亡くし、譲り受けた店は倒産寸前。相談できる友人も恋人もいない。ある日、常連客との約束に遅刻した上にミスをしてしまったバーバラは、店に戻る途中に麻薬取引の現場に遭遇してしまう。売人の男たちは血まみれで倒れ、道には破れた麻薬入りの袋、拳銃、そして大金入りのトランクが転がっていた。横取りか通報か、それとも見て見ぬふりか?運命の3択がバーバラの頭をよぎる…と言うストーリー。

    本国版?かインターナショナル版のアートワーク。こちらもクラシカルでなかなかいいですね。

    細かいツッコミどころはあるけど、全編センスの良い映像と奇想天外なストーリーで面白く観ることができる、ユニークで才気に溢れた作品。オシャレデートにもぴったりの1本です。

    鑑賞後にHPを見たら、なんと監督のフレディ・マクドナルドは2000年生まれ。我々にとって2000年なんてついこの間なのに笑。現在25歳で、撮影時は恐らく23歳くらいだろう。何という若さだ。さらに資料を読んでいくと、監督が19歳の時に作ったこの作品のパイロット版のような短編映画があって、それを観たジョエル・コーエンが絶賛し、長編制作を勧めたらしい。何とも夢のある話だ。確かにこの映画にはスリルとユーモアがたっぷりあって、まるでコーエン兄弟の映画のようにも思える

    僕はそれこそ『ファーゴ』や『ブラッド・シンプル』みたいな、田舎町を舞台にしたミステリーやサスペンスが大好きなので、この映画をすっかり気に入ってしまった。

    全編「さあ、この後どうなる?」というワクワク感に満ちているし、次々に予想を裏切るユニークな展開を用意していて飽きさせない。ラストの人を食ったようなオチもうまく決まっている。

    お針子の技術を駆使したさまざまな仕掛けは視覚的にもカラフルで実に見ていて楽しいし、スイスの田舎町の風景も実に美しく、舞台設定に効果的なロケーションになっている。あと音楽もすごく印象的で素晴らしいサウンドトラックでした。

    限られた登場人物と限られた予算で知恵を絞って作られた映画には傑作が多い。この映画はまさにそんな感じ。

    この新鋭監督がその才能に磨きをかけて、さらなる傑作を作ってくれることを願うばかりだ。「初期は良かったけどその後全然ダメだったよね」みたいな監督はいっぱいいるので、何とかこの後も頑張って欲しいものです。

    『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』監督:フレディ・マクドナルド 2025年12月25日 @シネ・リーブル池袋 シアター2

    蛇足的追記:

    🔳僕はブルーレイが出たら買いますよ。そもそも出るかどうかかなり微妙だと思うけれど。

    🔳パンフレット1000円は高いな〜笑。800円なら買ったかも。

    🔳映画はもちろんだけど、ポスターなどのアートワークはすこぶるセンスよし。ひと昔前なら『アメリ』みたいにシネマライズあたりで公開されて“シブヤ系オシャレ映画”としてロングランしてたかも?と思わせるような作品でした。

  • 長尺のせいで終電対策が大変な『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』

    前作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』から3年、ついに待望の第3作が公開された。とにかく公開初日に観たかったのだが、何と(と言うか想定内だったが)上映時間が3時間17分もある。そのため鑑賞スケジュール的にこの映画は「ちょうどいい時間に始まってちょうどいい時間に終わる」のが難しい。僕の場合夜に観に行きたかったので、18時30分くらいに始まって、22時くらいに終わる時間帯だと余裕を持って帰れるので都合がいい。だが、なかなかそういうスケジュールの劇場はない。

    さらにこのシリーズは絶対にIMAX3Dで観ると決めているので劇場も限られる。ちなみに僕がよく行くグランドシネマサンシャイン池袋の夜の回は20時45分開始の0時17分終了で終電に間に合わない。TOHOシネマズ新宿は20時50分開始で24時30分終了でこちらも終電がアウト。TOHOシネマズ日比谷なら19時40分開始で23時15分終了なのでかろうじて大丈夫だが、ちょっともたついている間に観やすい席が売り切れてしまった。

    さあ困った、どうしよう?と思っていたらウルトラCの解決策が見つかった。ちょっと遠いが穴場の「イオンシネマ越谷レイクタウン」のサイトを覗いてみたら、19時25分開始で22時55分終了の回があった。まあ遠いのでギリだが何とか帰れる時間だろう。観やすい席もたっぷり残っている。「ここしかない!」と言うことでチケットを入手した

    と言うことで待望の『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』をIMAX3Dで鑑賞。以下ネタバレありですのでご注意ください。

    もちろん超大作だし、基本はアクション映画なので普通に面白く観られるのだけれど、今回はさすがに「少し長いな」と感じてしまった。僕は1作目の通常盤もエクステンデッドエディション(ロングバージョン)も長いとは感じなかったし、2作目(上映時間3時間12分)も長いなとは思わなかった。

    ではなぜ今回は長いと感じたのかというと、まあはっきり言っちゃえば「惑星パンドラに慣れてきた」のだと思う。これまで1作目は「森」、2作目は「海」を舞台にさまざまな生態系や文明を描き、それぞれに新鮮な驚きがあったわけだが、今回は1作目と2作目と同じ舞台でそのまま物語が展開するので、あまり新鮮味がないし驚かない。「前に見たことある場所」なのだ。

    そして、ストーリー展開やキャラクターの行動原理がやや雑になってきた、ということ。ジェイクが人間側に捕まったと思ったらあっさり救出されたり、救出のキーマンがその後重要な役割を担うのかと思ったらそうでもないし、とかサスペンスの鍵だった「スパイダーのマスク問題」も唐突な展開であっさり解決しちゃうし、「このターンは本当に必要なの?」みたいなシーンが多い

    さらにキャラクターに関して言えば、それぞれの信念がブレブレで、特にクオリッチは優しくなったり冷酷になったり、改心したかと思ったらしてなかったりとか何だかよくわからなくなってきてしまった。ジェイクもスパイダーを守ろうとしたり殺そうとしたりで、そんな中で唐突にとってつけたような見せ場が展開するのでちょっと感情移入ができなくなってしまう。

    あと今回最大のウィークポイントは「クライマックスが前作の焼き直しの海上決戦」になってしまっていることだ。2作目が素晴らしかったのは「海」を舞台に、1作目の「森」とは全く違う舞台とアイディアで戦闘シーンを見せてくれたことで、とにかく新鮮な驚きがたくさんあったのだ。だが、今回は「そのパターンは前にも観たな」と思っちゃうシーンが多く、少し退屈してしまったのだ。演出も前作の方がねちっこくて良かったし、今回はサクサク進みすぎて物足りない感じがしてしまった。

    と、ざんざんケチをつけてしまったが、僕はキャメロンの創る世界が大好きなのでたぶんもう一回は観ると思います笑。この壮大なスペクタクル・アクションは他の人には絶対に真似のできないスケール感。今回の着地でシリーズが終了するということはさすがにないと思うので、引き続き4作目も待ちたいと思う。次こそは舞台をガラッと変えてほしい。

    『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』監督:ジェームズ・キャメロン 2025年12月19日@イオンシネマ越谷レイクタウン IMAXスクリーン

    蛇足的追記:

    🔳まずこの作品はハイ・フレーム・レートと言う上映方式で、『ホビット』シリーズなどと同様の方式(『ウェイ・オブ・ウォーター』も同じ方式だったかはもう忘れてしまった)。確か1秒間のコマ数が60フレームで、人間が肉眼で現実世界を見る状態に近い映像になっているのだとか聞いたような気がする。まあとにかく必要以上に動きが滑らかなので普段の24コマ、あるいは30コマの映画に慣れている我々には少し違和感がある。しばらく観ていると気にならなくなるが、最初はちょっと気持ち悪い笑。

    🔳今回初登場し、ポスタービジュアルにもなっているアッシュ族のヴァラン。好戦的で残忍というキャラクターはいいのだけれど、あまり魅力を感じなかった。種族の女性リーダーにはやはりそれなりの思想やカリスマがあって欲しい。我々の意識の中にはエボシ御前(『もののけ姫』1997年)が刷り込まれていて、彼女に比べると半端なリーダーは見劣りしてしまうのだと改めて実感。

    🔳久しぶりに入場者プレゼントでA3版IMAXポスターをもらいました。僕は入場者プレゼントでは一番これが嬉しい。しばらく飾って鑑賞の思い出に浸れるし、コレクション性も高い。大きさも手頃で処分する時にあまり心が痛まないのもいい笑。ただ時々デザインがダサいやつがあるので、あれはやめてほしい。

    これが各フォーマットの入場者プレゼントのポスター。全部かっこよくてハズレはないですね。でも3作目の鑑賞記念としてならやはりIMAX版がベストかなと思います。
  • いにしえの深夜映画へ思いをはせる『デス・ゲーム ジェシカの逆襲』をBlu-ray鑑賞

    とにかくB級映画と呼ばれるジャンルが大好きで、とりわけ70〜80年代のものが大好物です。もちろん後にヒットメイカーとか巨匠と呼ばれるようになったジョン・カーペンターやデヴィッド・クローネンバーグ、ジェームズ・キャメロンらの初期作品には格別の思い入れがあるし、彼らがビッグになる前からその才能に注目していたという自負もある。低予算作品こそ、監督のセンスや技量の見せ所だし、後に花開く才能の片鱗が見えるのもすこぶる楽しいものです。

    しかしそんな作品たちはB級作品のごく一部であり、そのほとんどは注目も再評価もされずに人々の記憶から消えていく運命にある。まさに「知る人ぞ知る」作品となっていく。今回紹介する作品も恐らくそんな1本と言えるだろう。

    ネット情報によると、この1986年オーストラリア映画『デス・ゲーム ジェシカの逆襲』は、日本では劇場公開されず、イベントで上映されたのみで、深夜枠でテレビ放送されたものを観た人の数の方が圧倒的に多いようだ。そんな作品でありながら、「意外と面白かった」という印象を持っている人がいっぱいいるのだから世の中捨てたものではない

    というわけで、製作から約40年も経とうとしているというのにUHDリマスターのBlu-ray&DVDが発売された。Amazonのおすすめにこの作品が出てきた時、一目で僕好みの作品だと思ったが、買うのを1年以上も躊躇してしまった。人並みに「とんでもない駄作だったらどうしよう」と思ってしまったのだが、うかうかしていると市場から商品が消えてしまいそうなので観念して購入。届いたその日にワクワクしながら鑑賞したが、まあ予想通りのグダグダ感と楽しさをたっぷりと味わうことになった。

    オーストラリアの動物保護区で馬や犬、鳥たちとともに暮らしているジェシカは、車で街への移動中に、改造車に乗る3人の男たちに遊び半分であおられてしまう。鼻っぱしの強いジェシカは男たちに抵抗するが、そのことが男たちに火をつけてしまい、ジェシカは彼らに執拗に襲われることになる…というストーリー。

    もちろん、サブタイトルにあるように後半はジェシカが反撃に転ずるわけだが、まあ見事なB級映画である。もう少しずつ脚本と演出を練れば『マッドマックス』までは行かなくても『マッドストーン』くらいまでは近づけそうな題材なのに、惜しいところでグダグダになってしまっているのが何とも愛らしい。

    一人暮らしの若い女性VS荒くれ男3人という、これ以上ない単純なプロットなのに、それぞれのキャラクターの感情が全く掘り下げられず、行動の動機がゆるゆるなので、まったくサスペンスが生まれないのである。実にもったいない。

    西部劇のような広大な大地での対決になるので、キャラクターやセット、登場する車のショボさはそんなに気にならないが、肝心のアクションシーンがどうにもこうにもキレがなく、高揚感が生まれないのもトホホである。

    それでも後にタランティーノが『デス・プルーフ』でオマージュした、ジェシカを半裸にして改造車のボンネットに縛り付け、荒野を疾走するシーンなど印象的なショットもいくつかあったりして、才気がないわけでもないというところが実に憎めない笑

    まあ結論を言うと、深夜に何となく観たら意外と面白かった的な映画で、尺も82分と観やすいし、エロもアクションも程よくあるし、そもそも本気になって怒るほどのこともない小品と言う感じ。けなしてばかりのように思うかもしれませんが、僕はこのBlu-rayを買って損したとは1ミリも思っていません。「何年かしたらまた観たくなっちゃうかもしれないな」くらいの魅力は十分あります。『デス・プルーフ』や『マッドストーン』や『ヒッチハイク』や『REVENGE リベンジ』なんかが好きな人にはぜひ観てほしい、いにしえの作品です

    『デス・ゲーム ジェシカの逆襲』監督:マリオ・アンドレアッシオ 2025年12月17日 Blu-ray字幕版にて鑑賞

    蛇足的追記:

    🔳Blu-ray画質は可もなく不可もなく。元々が80年代のフィルム撮影なのでこんな感じでしょう。パッケージのイラストはこのBlu-rayのために描かれたのでしょうか?とてもいいです。このパッケージイラストに惹かれてこのBlu-rayを購入したと言っても過言ではありません。

    🔳僕は少し前にAmazon primeで『REVENGE リベンジ』(2017年)を観ましたが、ほぼ同じような映画でしたね笑

  • ネタバレ厳禁って程じゃないけど情報はあまり入れずに観た方がいい『WEPONS/ウェポンズ』

    この映画がアメリカで大ヒットしている、という情報を聞いてから、いつか日本で公開される日まで、極力この作品についての情報を見ないようにしよう、と決めた。情報過多な昨今、気を抜くとネタバレ記事やおいしいシーンの映像を見てしまうことが多く、それがこの手の映画の鑑賞時に致命傷となることが多いと思っているので気をつけていた。

    というわけで、ようやく『WEPONS/ウェポンズ』が日本公開された。公開週の平日夜の回に映画館へ向かうと、大きめのスクリーンでの上映だったがお客さんは5〜6割の入り。観やすい席はほぼ埋まっている。

    もちろん予告編も見ていないし、どんなストーリーか、誰が出ているかも知らずに映画を観るのはとてもワクワクする経験だ。

    少しだけストーリー。アメリカのある小さな街で、ある学校のクラスメイト17人が水曜日の深夜2時17分、暗闇の中に走り出して姿を消した。クラス担任の女性教師ジャスティンは集団失踪事件に関与しているのではないかと疑いをかけられ、その真相に迫ろうとするが、この日を境に街には不可解な事件が多発していく…。

    ネタバレ厳禁の映画なので、僕の感想も含めてあまり多くを記すのはやめておこうと思うけど、70年代のB級ホラーや、ジョン・カーペンターやデヴィッド・クローネンバーグらの初期の作品、スティーブン・キングの小説なんかが好きな人は絶対に観た方がいいです。不穏なドキドキ感やショック・シーンがたっぷりあって楽しめること請け合いです。

    『WEPONS/ウェポンズ』監督・脚本・製作・音楽:ザック・クレッガー @池袋グランドシネマサンシャイン シアター6

    以下少しネタバレありの蛇足的追記:

    🔳低予算B級映画だと思っていたので主演のジョシュ・ブローリンをはじめ『ドクター・ストレンジ』のベネディクト・ウォン、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のオールデン・エアエンライク、『ストリート・オブ・ファイヤー』のエイミー・マディガンなど名のある俳優たちも結構出ていてびっくりしました笑

    🔳あまり予算もかけているようには見えませんが、画作りが丁寧なのでしょぼい感じが全くなく、ちゃんと緊張感が途切れないように作ってあるのはさすが。画面が本当に美しくて、人によってはトラウマ級の恐怖体験になるかもしれませんね。監督・脚本・製作・音楽のザック・クレッガーという名前は覚えておいていいかもしれません。

    🔳最後までワクワクしながら見ましたが、タイトル『WEPONS/ウェポンズ』の意味するものとか、起こっている事件が何のメタファーになっているのかなどが、もうちょっとだけ明確になっていたらものスゴイ傑作になっていたような気がします。そこは少し惜しかった。

    1976年公開『ザ・チャイルド』傑作です!オススメですが、今やBlu-rayを購入するしか観る手段がない。値段がもう少し安かったらな…

    🔳この映画を観ていて思い出したのは1976年公開のスペイン映画『ザ・チャイルド』。ある孤島にバカンスにやってきたイギリス人夫婦が島に大人が全くいないことを不審に思っていたら、子供たちが…?!というお話。直接的には描かれていないけれど、歴史的に世界中で小さな子供たちを虐げてきた大人たちへ静かな怒りみたいなものが、島の子供たちの眼差しの中に宿っていて、すごく心に残りました。そういうものが『WEPONS/ウェポンズ』でもうっすらでいいから見えてくると良かったなと思いました。

  • 60年前すでに完璧なスタイルを築いていた名作『サウンド・オブ・ミュージック』に改めて感嘆

    製作60周年を記念して、1965年公開の名作ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』が期間限定で劇場公開された

    僕がこの作品をちゃんと観たのは割と最近(と言っても10年くらい前だが笑)。それまではテレビ放送されたものを途中から観たことがあったりしただけで、なんとなく観たような気になっていたのだ。で、10年ほど前に確か『午前10時の映画祭』だったと思うが、ちゃんと劇場でノーカットで全編をしっかりと観た。

    その時思ったのは「なぜこんな素晴らしい映画を今までちゃんとした形で観ずにいたのだろう」という後悔だった。先人たちが「名作、名作」などと言っているものはなんとなく敬遠したくなるもので、僕もそんな感じで積極的に観たいとは思っていなかった。でも実際に観てみたら上映時間3時間の間、一瞬たりとも飽きさせない傑作だった。

    まずは楽曲の素晴らしさ。今やスタンダートとして誰もが知っている曲のオンパレードで、誇張なしに全部名曲である。その楽曲たちを最大限に活かした見事なミュージカルシーンと物語の面白さ。ジュリー・アンドリュース、クリストファー・プラマー、そして子供たちの生き生きとした演技。天才的な監督ロバート・ワイズの演出。美しいオーストリアのロケーションと、どれをとってもダメなところがない。

    映画を観た後、調子に乗って劇団四季版の舞台も観に行ってしまったくらい、この作品の素晴らしさに打ちのめされてしまった。ちなみに四季版も実に良かった。もうこの作品は、映画化される前のブロードウェイ・ミュージカルの時点でそのスタイルを完成させ、何十年もの間世界中の多くクリエイターに影響を与え続けているのだな、と驚嘆した。

    で2025年11月、映画製作60周年を記念した劇場公開が行われたわけだ。僕はTOHOシネマズ日比谷で鑑賞したが、なんとスクリーン5というキャパ386席というかなり大きめのシアターでの上映だったことに驚いた。そしてかなり早い段階からチケットがどんどん売れていき、当日朝には完売状態だった。劇場に集まった観客はもちろんオールドファンが多かったけれども、皆さん新作映画を観るように熱い視線をスクリーンに注いでいた。みんな大人なので静かに観ていたが、本当はトラップファミリーと一緒に歌いたかっただろうな、と思った。

    先日観た『アマデウス』も同様だったが、何十年経っても人々がお金を払ってスクリーンで観たいと思う作品というのが真の名作であると僕は思う。劇場でこの作品を観るのは3回目だったけれども、これからまた何度でも観たいと改めて思えた3時間であった。

    2025年11月29日(土)@TOHOシネマズ日比谷 スクリーン5

    蛇足的追記:

    今回少し残念だったのは、TOHOシネマズ日比谷のスクリーン5のフルスクリーンでなくビスタフレームでのトリミングシネスコ上映だったこと(1.85:1のビスタフレームの中に2.35:1のシネマスコープフレームが収まってて、上下が黒味が出る)。

    これはおそらく、上映素材が、新たに発売される4K UHD用のマスターだったと思われ、これが一般家庭用テレビ用の16:9(ビスタとほぼ同じ)フレームで作られているからであろう。

    映画『サウンド・オブ・ミュージック』製作60周年記念版 4K UHD+Blu-rayセット 
    2026年1月21日発売 

    『サウンド・オブ・ミュージック』のオリジナルフレームはシネマスコープ(2.35:1)なので、本来TOHOシネマズ日比谷のスクリーン5なら、フルスクリーンで上映されるはずだが、上記のような経緯で今回は少し小さめのフレームになってしまった。難しいだろうけど、もしこの情報が事前告知されていればもう少し前の席を取ったのになあ〜と思ったが、後の祭りである。まあ、貴重なスクリーン鑑賞の機会だったし、その4Kマスターのおかげで映像は綺麗だったのでよしとするか。

    こういうのはたまにあって、リブート版の『ゴーストバスターズ』(2016年)とかクリストファー・ノーランの『テネット』(2020年)とかも、期待してフルシネスコの映画館を選んだのにビスタのトリミングシネスコ上映でがっかりした。こういうのは作品の内容以前に気分が落ちる。昔は映写技師がちゃんとフレームを合わせてくれたものだが、シネコン時代となった今は、そういう融通は効かないのでしょうね。

    そういえばこの作品と同じロバート・ワイズ監督の『ウエストサイド物語』(1961年)をスティーブン・スピルバーグが2021年にリブートしましたが、全然ダメでしたね。『サウンド・オブ・ミュージック』も映画のリメイク、リブートはやめて欲しいです笑。

  • 『アマデウス』40年の時を超えてスクリーンに蘇った愛と嫉妬の愉楽

    我々世代にはたまらない名作上映企画『午前十時の映画祭』で1985年日本公開の『アマデウス』4Kレストア版が上映されることになった。もちろん公開当時に劇場鑑賞し面白く観た記憶はあるが、それ以降1回も観ていなかった。

    というのも、当時は僕はまだ若く、この映画について少し「真面目で堅苦しい」という印象を持ったのかもしれない。なので、今回の上映も観るべきかかやめるべきか迷った。さらに最寄りの映画館が池袋グランドシネマサンシャイン・シアター6で、ここはアップグレードのBESTIAスクリーンで追加料金が300円かかってしまう。4Kレストア版とはいえ、40年前の映画に追加料金300円出す程の価値があるかな?と、正直悩んでいたのだ。

    で、グズグズしていたのだが結局「見逃して後悔するより観て後悔だ」と気持ちを切り替え、公開2週目の日曜日にチケットを押さえて劇場へ向かった。上映シアターのキャパ235席はなんと満員。朝9時55分スタートの回なのにオトナの観客ですごい熱気だ。

    ピーター・シェーファー作ブロードウェイの舞台劇を『カッコーの巣の上で』のミロス・フォアマンが映画化。天才音楽家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの知られざる半生を、彼を妬む宮廷作曲家サリエリの視点で描く物語。すっかり忘れていたが米・アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞(F・マーレイ・エイブラハム)など堂々8部門を受賞している名作である。

    で、40年ぶりとなる再鑑賞の感想だが「凄まじく面白かった!」。上映時間2時間41分があっという間に過ぎていく。特に印象に残るのはやはりサリエリのモーツアルトへの嫉妬と尊敬がせめぎ合うクライマックスのシーンだが、それ以外にも85年当時は気づけなかったことも色々わかるようになって、初めて観た時よりも深く感動した。

    なんといっても全編映画としての精度の高さが圧倒的だ。隙のない濃密なドラマの中に、モーツアルトの名曲の数々を「これでもか!」とバンバン挟み込んでくる。まさにモーツアルトのオールタイム・ベストを彼の生涯の物語付きで鑑賞できるゴージャスな体験だ。しかも今回観た池袋の劇場はめっちゃ音が良くて、深く響いたり、広く包み込まれるようになったりと本当に素晴らしかった。さすが300円の追加料金をとるだけのことはある(しつこい笑)。

    そして驚いたのは観客のほぼ全員が、ものすごい集中力で映画を見ていたということ。もちろん売店でポップコーンやスナックを買ってきている人もいたけど、バリバリものを食べるような音を立てる人は一人もいなかった。まるで観客全員が劇場を満たす音楽を一音も聞き漏らさないようにしているかのようだった。

    さらにエンドロールに入っても誰も席を立たず、終わった瞬間には結構盛大な拍手が起こった。僕も「コンサートじゃあるまいし」とか思いつつ、一緒に拍手してしまった。日本人はシャイだから、もちろん観客全員ではなかったけれど、多くの人がこの映画を心から楽しんだことがわかる、実に感動的な劇場体験でした。観るのをやめないで本当に良かった。

    いつかまたこの作品が劇場公開されたら、今度は何十年も空けずに必ず観に行きたい。その時もぜひグランドシネマサンシャインの素晴らしい音響と大きなスクリーンでの上映だったらいいなと思う。ちゃんと追加料金300円払いますから笑。

    11月16日(日)@池袋グランドシネマサンシャイン シアター6BESTIA